2018年5月31日 カデルボスコ マウリツィオザネッラ氏
フランチャコルタを牽引するカ デル ボスコの真髄「キュヴェ プレステージ」発売10周年記念セミナー |
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カ デル ボスコはイタリア最高峰DOCGスパークリング「フランチャコルタ」のリーダー的存在の造り手。そして、カ デル ボスコの名刺的ワインが「フランチャコルタ ブリュット キュヴェ プレステージ」です。発売から10周年を記念して造られた限定キュヴェと、5つのヴィンテージの垂直試飲セミナーに行ってきました。キュヴェ プレステージが誕生して以降もBIO認証の取得、そしてブドウ洗浄システムの導入と改革を続けてきたカデルボスコの取り組みについて、カデルボスコ社長マウリツィオ ザネッラ氏からお話しをお聞きしました。 | ||||||||||
キュヴェプレステージはノンヴィンテージではなく「マルチヴィンテージ」フランチャコルタ |
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キュヴェプレステージの発売から10周年となり、昨年、イタリアで記念イベントを行いました。イタリア以外でこのようなイベントを行ったのは日本だけです。カ デル ボスコと日本との結びつきはそれぐらい強いものだと感じています。
キュヴェプレステージはカデルボスコのスタンダードワインなので一番シンプルなワインだと言われていますが、私たちにとっては一番難しいワインなんです。ミレジマートやアンナマリアクレメンティなどは上級ラインですが、シングルヴィンテージなのである意味造るのは簡単と言えるのです。一方、キュヴェプレステージは毎年、同じ品質の同じものを造り続けなければなりません。だから難しいのです。 私たちはキュヴェプレステージをノンヴィンテージとは言いません。「マルチヴィンテージ」と呼びます。毎年、最も良いワインをリザーブワインとしてストックすること。これが最も重要なことだと考えています。 |
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47回の収穫で培った経験と知識をもとに常に5ヴィンテージ分のワインをリザーブ |
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カデルボスコは今まで47回の収穫を経験してきました。この経験によって5年分(5ヴィンテージ分)のワインを常にリザーブするようにしています。キュヴェプレステージはたくさんの色を使って絵を描くのと同じです。1ヴィンテージだけのワインだと単調になってしまいます。それぞれのヴィンテージには長所と短所があって、それを補うためにリザーブワインを使います。これによって一貫して同じ品質のものを造り続けることができます。
47年前からフランチャコルタを造っていますが、キュヴェプレステージは10年前に誕生しました。現在、カデルボスコはフランチャコルタエリアの18の村のうち、9の村に畑を所有しています。全部で220ヘクタールになります。畑の場所ごとに特徴が異なります。それと、温暖化の影響もあって、近年はより標高の高い畑を探すようにしています。現在、標高450メートルのところにも3つほど畑をもっています。 |
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20年前から有機栽培に着手し、認証を取得。ブドウ洗浄システムの開発 |
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20年前から有機栽培を始め、現在は認証を取得していますがラベルに表示するつもりはありません。オーガニック栽培と言うのは昔に戻る、ということです。50年前に行っていた栽培方法に戻るということですね。だから畑ではボルドー液だけを使うことになります。ということは、ブドウの表面にボルドー液の成分の銅がどうしても残ってしまいます。発酵段階で銅由来の匂いも出ることがわかっています。
この洗浄システムを導入することにより、まず果実本来のアロマが出てクリーンになったこと。そして洗浄によってバクテリアを除去することができたので酸化のリスクが減り、結果SO2の量を減らすことができました。 現在取り組んでいるのが、一次発酵をしたワインの澱をそのまま一緒にして二次発酵ができないかという実験です。そもそも、洗っていないブドウは不純物が含まれるので一次発酵後に残った澱には不純物の混ざった部分があり、これがいやな臭いを含みます。これを取り除いてからではないと二次発酵には進めません。一方、洗浄したブドウには不純物がない。だからそのまま澱ごと二次発酵できないか、ということです。 それと、瓶内熟成中は酸素に触れることはないのでいわば還元状態にあります。デゴルジュマンした瞬間、いきなり酸素に触れるので酸化する。だからそれを防ぐためにSO2を添加します。EUの規定ではスパークリングワインの場合SO2の量は最大で185mg/リットルまで添加することが可能です。カデルボスコでは以前は40~50mg/リットルのSO2を添加していました。でもデゴルジュマンを真空状態で行うシステムも開発したのでデゴルジュマン時にSO2は添加していません。このシステムも特許を取得しています。 |
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フランチャコルタとシャンパーニュを比較するのはナンセンス |
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フランチャコルタをシャンパーニュと比較する人がいますが、これはナンセンスです。この2つは全く異なるものだからです。フランチャコルタとシャンパーニュでは産地の特徴が違いすぎます。フランチャコルタはドサージュをする必要がないと言っていい。しなくても十分に飲み心地の良い、喜ばしい味わいになるからです。
でも、シャンパーニュは非常に北にある産地で、酸も高く、フェノール類も少ない。つまり、このままではきつすぎて飲めないのです。だから門出のリキュールと言うものが存在します。ブリュットを比較した場合、フランチャコルタの残糖値が5~6g/リットルに対して、シャンパーニュは9~10g/リットル。これだけの違いがあります。 カデルボスコの成長、発展はこれからも続きます。今後はテロワールをより表現することにも取り組みたいですし、フランチャコルタという産地のポテンシャルも高めていきたいと思っています。ワイナリーとしてはまだまだ若いので、常に新しいことに挑戦し、革新的な取り組みをやっていきたいと思います。 |
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10周年記念ボトルと垂直試飲(ベースのヴィンテージ:2013、2009、2007、2006、2005) |
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発売10周年を記念して特別にブレンドしたキュヴェです。2015年のベースワインと2014年、2013年のリゼルヴァワインをそれぞれ3分の1ずつブレンドしています。ドサージュは3g/リットル。今日飲んでいただく他の垂直試飲のキュヴェプレステージはこのイベント用にノンドサージュで造っています。
(続いて2013年、2009年、2007年、2006年、2005年をベースとした5つのキュヴェプレステージを垂直試飲しました) 通常、キュヴェプレステージはドサージュをしますが、今回の試飲ではドサージュゼロのボトルを用意しました。デゴルジュマンは全て半年前です
各キュヴェについて感想ですが、2013年はまだ若々しく、縦に伸びていく印象です。2009年はより開いた感じがします。2007年は暑いヴィンテージで歴史的に早い収穫でした。いい意味で薄いというか、軽やかで今飲み頃です。2006年は厳格な味わいで、お肉料理なんかとよく合いそうです。そしてこれからもさらに熟成を続けて伸びていくと思います。2005年は涼しいヴィンテージでイタリアは過小評価された年なんですが、今になって凄くいいヴィンテージだったと見直された年です。 こうして飲み比べてみるとヴィンテージごとの特徴がわかりますし、同時に一貫性も感じられます。 ■10周年記念ボトル ■2013年(2013年70%、2012年リザーブワイン15%、2011年リザーブワイン8%、2010年リザーブワイン7%) ■2009年(2009年65%、2008年リザーブワイン15%、2007年リザーブワイン10%、2006年リザーブワイン10%) ■2007年(2007年72%、2006年リザーブワイン15%、2005年リザーブワイン8%、2004年リザーブワイン5%) ■2006年(2006年73%、2005年リザーブワイン21%、2004年リザーブワイン6%) ■2005年(2005年ワイン75%、2004年リザーブ15%、2003年リザーブ10%) |
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■インタビューを終えて | ||||||||||
今回の長期間のシュールリーによるキュヴェプレステージの垂直試飲はとても貴重な経験でした。通常リリースされるものとはもちろん違いますが、カデルボスコのキュヴェプレステージのポテンシャルの高さを実感できました。
ヴィンテージフランチャコルタよりも複数ヴィンテージのブレンドで造るキュヴェプレステージの方が難しい、というザネッラ氏の言葉はとても説得力がありました。毎年、毎年、安定した高い品質のフランチャコルタを造り続け、市場にリリースし続ける使命を背負っているからこその言葉。その結果が表れているキュヴェプレステージ。ついつい高級なヴィンテージものに目が行きがちですが、複数ヴィンテージのブレンドの醍醐味を味わいながらこれからも楽しませてもらいたいと思います。 |
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フランチャコルタを牽引するカ デル ボスコの真髄「キュヴェ プレステージ」発売10周年記念セミナー
2018/06/13